* * *
レオナ専用の執務室を訪ねたラギーが少女の話をすると、思い当たる節があるのかレオナは少し思案した後に少女と会うことを承諾した。今手を付けている業務が一区切りつくまで待たせておけとのことだったので、その旨を少女に伝えると「いくらでも待つわ!」と喜んでいた。手続きのための一ヶ月は待てなくても、会えると決まってしまえばそれでじゅうぶんらしい。
このままレオナの仕事が片付かず、結局一ヶ月も待つ羽目になったとしても少女は耐えうるのだろうか。まぁ、さすがにそこまで待たせるとわかっていればレオナなら相手を一度帰らせるだろうが。
レオナとの謁見が決まってから、先ほどまでの兵士相手にも物怖じしない堂々とした姿勢とは打って変わって、少女はそわそわと落ち着かない様子で両手を揉んでいる。
緊張しているのだろうか。王宮という大それた場所に正面から特攻するほど会いたがっていた相手と会えるとなれば、それもそうだろう。一人頷いていたラギーだったが、少女に出されていた客人用のカップの中身を飲み干した後発せられた「喉渇いちゃった……おかわりもらえたりする?」という言葉に、やはり少女はなかなか図太い神経の持ち主だと再認識することとなった。
一時間ほど経過し、使用人伝いにレオナから呼び出されたラギーと少女は、レオナの執務室へ向かっていた。普段であれば応接室に通すのだが、どうやら急ぎの仕事が立て込んでいるらしく、移動せずに済ませたいらしい。少女も特に気にしている様子はなかった。夕焼けの草原の伝統的な紋様を彫り込んだ木製の大きな扉をラギーがノックし、部屋の主の返答を待つ。程なくして聞こえたレオナの「入れ」という言葉に、音を立てて軋む扉を押し開いた。
「……ッ」
「えっちょっと!」
部屋に踏み入り、レオナの姿を視界に入れるなり少女は突然駆け出した。慌てて止めようとしたラギーを、レオナが左手を掲げて制止する。
「『おゆるし』は出してねーぞ」
レオナの言葉に、少女の足がピタリと止まる。しかし今にも飛び込もうとせん勢いのままブレーキをかけたせいで、体が前方へと傾いた。転びかけた少女を、立ち上がったレオナの腕が受け止める。
「…………べ、別にいきなり触ろうだなんてはしたないこと、する気は無かったわ」
「俺の耳に思いきり狙いを定めてたじゃねーか」
「うっ……ずっと恋い焦がれてきた毛並みが目の前に現れたら手を伸ばしたくなるのが人情ではないかしら!?」
「あいにく自前のもんで足りててな。その感情は理解しかねる」
「くぅ……羨ましい……!」
およそ十年ぶりの再会とは思えぬやり取りにラギーがぽかんと呆けていると、お礼を言いながら身を起こした少女の頭を、レオナがそっと撫でる。
「――でかくなったな」
その声音には、レオナにしては珍しく郷愁の念が込められていた。
「もう十八だもの。そりゃ成長してるわよ」
「……なんだ、成長した代わりにずいぶん可愛げがなくなったな」
「色々あったのよ! 十年も経てば貴方も色々あったでしょう!」
「そうだな――……確かに、色々あった」
少女の言葉に、レオナは自嘲めいた笑みを浮かべて鼻を鳴らした。そんなレオナの顔を、少女は無言でじっと覗き込む。しばらく観察するようにジロジロとレオナを見つめた後、一度首を捻ると、怪訝な顔で尋ねた。
「……貴方、本当におにいさん?」
「なんだ、そんなに変わったように見えるのか?」
「見た目はおにいさんだけど……なんだかその笑い方……暗いわ」
「ぶはッ……」
オブラートにも包まず率直な感想を述べた少女に、ラギーが思わず吹き出すとレオナがじろりと睨み付けてくる。
「…………おい、ラギー」
「はー……君、本当にはっきり言いますねぇ。嫌いじゃないッスよ、そういうの」
「どうも……おじいさまにもよく『もう少し慎みを持ちなさい』って言われたわ」
「はぁ……もう良い。とりあえず、その『おにいさん』ってのを止めろ」
「ダメなの? 私にとってはおにいさんは今もおにいさんのままよ?」
「もうそんな年でもないんだよ」
「じゃあ……レオナ殿下?」
「そこまでかしこまらなくて良い」
「……レオナさん……?」
「ん」
何やらむず痒さを感じる会話を交わす二人を、ラギーが黙って眺めていると、少女は先ほどラギーにも見せたNRCの領収書をレオナに差し出した。
「『約束』、覚えてる? おじいさまにもちゃんと認めてもらえる庭師になって、ここまで来たわ」
「……まさか、本当に来るとはな」
「私を、貴方の元で働かせてちょうだい!」
朗らかに言い放った少女に、レオナはがしがしと頭の後ろを掻いた。
「良いだろう。ただし、俺は『俺のお眼鏡に叶うくらいの腕前になれてたら』とも言ったはずだ」
「そ、そうね、確かに言われたわ……」
「だから、しばらくは試用での雇用だ。この屋敷の中に、使われていない中庭がある。長いこと放置されているから荒れているが、まずはそこをどうにかし整備しろ。それから正式に雇うかどうか決めてやる」
「わかったわ!」
レオナからの提案を、少女は迷うことなく二つ返事で受け入れた。
レオナの指す中庭は確かに存在しており、誰も手を入れることなく放置されているから荒れ放題ではあったが、今さら整備する必要はあるのだろうか。ラギーは不思議に思ったが、当人たちがそれで良しとするのであれば、自分が口を挟むことではないと判断し、何も言わなかった。
「後で案内してやるから、少し待ってろ。ラギー、お前今日の午後は仕事入ってたな」
「ッスね。一応こっちが落ち着いたら戻るとは伝えてありますけど」
「それならそのままこっちに付き合え。調査結果の方は明日で良い」
「了解ッス」
机に向かって頭を悩ませる時間よりは、少女の相手をしていた方がずっと楽そうだ。しかも、業務扱いしてもらえるのであれば、しっかりとお給金ももらえる。ラギーはにこりと満面の笑みを浮かべ、レオナからの指示に頷いた。
「はー……十年前にそんなことが」
「正確には十一年前だけどね。誤差だから良いのよ」
「一年の誤差はでかすぎると思いますけど」
レオナが出られるようになるまでの間、少女と二人並んで執務室前の廊下で座り込んで待つことにしたラギーは、ずっと気になっていた二人が出会った時のことについて聞いていた。
そもそもレオナ自ら少女の案内を買って出る必要があるのかも甚だ疑問だが、まぁそこは何かしら考えがあってのことだろう。もしくは、日々大量の仕事に追われているレオナのことだ。ぼちぼち息抜きをしたかったか。
広い敷地と豊富な種類の植物が有名なNRCの植物園に管理者がいることは知ってはいたが、実際にどんな人物が手入れをしているのかということまでは知らなかった。何がいつ役立つかわからないためなるべく情報を手に入れるようにしていたラギーですら知らないことでも、毎日のように植物園に入り浸っていたレオナであれば、少女の祖父と会う機会もあったのだろう。
「庭師としてはもうとっくに仕事をもらえるようになってたけど、ここに来ることを十八歳になるまで許可してもらえなかったんだもの。それでも説得するのにずいぶん苦労したのよ」
「でしょうねぇ。親元離れて別の国で、いきなり王宮の専属庭師になるなんて無謀なこと」
話を聞く限り、少女の両親も祖父もだいぶ過保護な部類のようだ。少女の身内であれば、少女の無鉄砲さは熟知していたであろうし、なおさら心配にもなるだろう。
「……だって、約束してくれたんだもの。ちゃんと私の気持ちのことまで汲んでくれて。だから私も、ちゃんと考えて決めたのよ。あの人の元で働きたいって」
少女は抱えた膝に顔を埋めた。ぽつりと呟かれた「もう一度、あの人に会いたかったの」という言葉を、ラギーは聞こえなかった振りをするべきか、少々判断に迷った。少女の声が、微かに震えていたからだ。
少女ほどの若さで一人前の職人として認められるためには、相当の努力と苦労を要するに違いない。ただひたすらに、レオナとの約束を果たすことを夢見て、技術や知識を学び続けてきたのかもしれない。
「で、どうでした? 十一年ぶりの再会は」
結局、話を続けることを選んだラギーが尋ねれば、顔を上げた少女は視線をさ迷わせる。
「……想像と違ったわ」
「でしょうね」
「あの頃のおにいさんは、あんな風に笑う人じゃなかった」
少女の言う『あんな風』とは、レオナが良く眉を歪め自虐的な色を混ぜて浮かべる薄笑いのことだろう。確かに、学生時代はあまり目にすることのなかった表情だとは思う。鬱陶しそうな表情や、不遜な笑い方は良く見た覚えはあるが……しかし、少女の話す優しいレオナというイメージもまた、ラギーの知るレオナ・キングスカラーという人物像とはあまり結び付かなかった。
「――子どもから見た大人は、実際より輝いて見えたりしますからねぇ」
「そんなことわかってるわ。それでも……ううん、何でもない」
何かを言いかけて止めた少女は、不満そうに唇と尖らせた。
「ねぇ、そういえば貴方……えぇと、お名前は? 今なら教えてくれるかしら」
「ラギー・ブッチ。君は?」
試用期間という点と担当業務が違うとはいえ、少女はこれからラギーにとっては同僚となる。特に、経験上レオナとの接点が多い人物とは良好な関係を築いておいて損はない。にこやかに握手を求めれば、少女は「その笑顔、何か裏がありそうね……」と訝しがりながらも握り返してくれた。少女は意外と勘が良いようである。
* * *
「ね、お仕事、大丈夫なの? 押しかけた身で言うのも何だけど、忙しいんじゃ……?」
しばらくして執務室から出てきたレオナだったが、そもそも仕事が立て込んでいるからと執務室に呼び出されたのではなかっただろうか。忙しそうな姿を目の当たりにしたことで、今になって突然訪ねたことへの申し訳なさが湧いてきたがレオナをこわごわと窺う。
「急ぎの案件は片付けたから問題ない。昼食もまだだったしな。抜け出す口実ができてちょうど良い」
「そう……それなら、ありがとう」
先ほどはあまり話せなかったため、としてはこうしてレオナと並んで歩ける時間ができたことは素直に喜ばしかった。
「ここも王宮、なのよね?」
「いわゆる離宮だな。昔はほとんど使われてなかったが、何年か前から俺の居住用と執務室として使ってる」
歩きながらレオナは目に入った部屋がそれぞれどのような目的で使われているのか、レオナ以外にも使用できる部屋についてや、邸内で気を付けることなどを簡易的に説明し始めた。は慌てて鞄からメモ帳を取り出し、レオナの説明を聞きながら手元の紙に書き込んでいく。
屋敷の主であるレオナやラギーと連れ立って歩いていると、途中、何度か使用人と思しきいでたちの人たちとすれ違った。その度、彼らはに好奇の目を向けてきたが、誰もがレオナに挨拶を済ませるとについて特に言及することもなくすぐに仕事に戻っていった。
が最初に通された待合室以外にも、さらに広く豪勢な調度品が並ぶ応接室や個人で使うには少々規模の大きすぎる書斎や、大広間、キッチンなどを通り過ぎ、屋敷の奥――客室やレオナの私室があるというスペースへと繋がる扉を開いた先に、そこは在った。
「ここが中庭だ」
が目にした光景は、予想以上に酷いものだった。
屋敷と外廊下に四方を囲まれた中庭は敷地こそ民家の庭の何倍もの広さがあったが、元々植えられていた草木は全て枯れ、中央に置かれた噴水も水すら無い。乾期であるという理由だけでは説明しきれない、長いこと手入れもされず、放置されてきたという事実がそこに広がっていた。
「さっきも言った通り、まずはここをどうにかしてみろ。その様子を見て、正式に雇うかどうかを判断する」
「ここを……」
「できないか? 立派な庭師になった自信があるから、来たんだろ」
「ッやるに決まってるじゃない! ただお祖父様の後をついて回っていただけの、あの頃の私とは違うのよ。見せてあげるわ、私の十年……とちょっとの成長を!」
息まいて拳を握ったに、レオナが「上等だ」と鼻を鳴らす。
「期間は……そうだな、ひとまず半年くらいで良いか? 足りなければ相談しに来い」
一般的な庭の工事であれば、数ヶ月もあればじゅうぶんだ。敷地の広さや植物の入れ替えなどを考慮しても半年程度あれば事足りるだろうか。
まずは敷地の細部の確認とスケジュールを立てて、設計企画書も作成して――が必要な作業について頭の中で巡らせていると、レオナがふと思い出したように尋ねる。
「そういえばお前、ここに滞在中の宿はどうする予定だ?」
「あ、そうそう。どこか適当な宿に泊まるつもりだったけど、半年ともなるとちゃんと探した方が良いわよね」
「いちいち通うのも面倒だろう。この屋敷に住み込みで作業すれば良い」
「良いの?」
「住み込みで働いてる奴らの方が多い。部屋なら腐るほどあるしな。そこのラギーもそうだ」
腐るほど、と肩をすくめたレオナに、ラギーが補足する。
「料理人なんかの王宮内部の管理に関わる使用人の人らは専用の居住区があるんスけど、俺らみたいな職員はそういうのが無いッスからね。希望者は空いてる客室に住まわせてもらってるんスよ。まぁそもそもの職員の数が少ないからできるんスけど」
「わざわざこんな離れに泊まりに来る物好きもそうそういないからな」
そもそも、泊りがけでレオナを訪ねてくる者はそれなりの地位や家柄の人間しかおらず、貴人は王宮の方でもてなされることになっている。どうせ使われないのならと、提供しているらしい。それでも、ラギー曰くレオナの元で働く研究員や職員は二十人にも満たないそうだ。
「他の細かいことはそいつに聞け。あぁそれと、近いうちにファレナとも面会できるよう手配しておく」
「ファレナ……様って、王様よね。そんなに簡単に会えるの?」
「普通は一介の使用人を雇うだけでわざわざ会ったりはしないな。ただお前の場合は第二王子の推薦という扱いになるから、後から何か言われる前に顔を合わせておいた方が面倒が減る。俺から言えば少しは予定にねじ込めるはずだ」
「そういや、俺の雇用が決まった時も会わせられましたね。あんな終始窮屈な思いしかできないお茶会なんて、二度とごめんッスよ……お菓子はめちゃくちゃ美味かったッスけど」
「兄貴は俺の知人だと知ると妙に前のめりに接してこようとするからな……」
「それは確実にレオナさんがすげなさ過ぎるからッスよ。やたらレオナさんのこと聞かれましたし」
「王様と仲がわる……その、あまり折り合いが良くない、の?」
が普段使わない気を利かせて言葉を選んでみるが、あまり効果は無かったのか、レオナが小馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「下手ッスねぇ」
ラギーからも呆れたように笑われ、が項垂れる。
「アイツとは気が合わん」
何かを思い出しているのか、レオナが苦虫を嚙み潰したような顔で答える横で、「相変わらずッスねぇ」とラギーがシシッと特徴的な笑い声を上げた。
「向こうはレオナさんのこと構いたがるんスけどね。当の本人がずっとこんなんだから、二人の仲は平行線のままッス」
「どうでも良いだろ。それより、執務室に戻るぞ」
三人が執務室に戻ると、部屋の前には背の高いイヌ科と思しき獣人の男と、狐耳と大きな尾を揺らす年配の女性が控えていた。女性の背後でゆらりと揺れる金色の豊かな毛が、とても魅力的である。は思わず女性の尾を凝視してしまったが、ラギーに腕を突つかれて慌てて視線を逸らす。
二人は二言三言レオナと言葉を交わすと、執務室の中へ入ったレオナやラギー、の後に続いた。
「この二人は関わることが多いだろうから、紹介しておく。そっちの背の高い男がハンス。執事長だ。横の侍女が侍女長のニナだ」
レオナから紹介を受けた二人は、順にへ頭を下げた。も慌てて二人に名乗り、挨拶を交わす。
「私が執事長のハンスです。この屋敷の管理や使用人たちの指導などを請け負っております」
「ニナです。ハンスの元で侍女たちの統率を任されております」
「よろしくお願いします」
「……レオナ殿下、彼女は中庭の管理に携わると伺いましたが、私の元で?」
ハンスがレオナに顔を向けて尋ねる。
「いや、試用期間中は俺の直轄で良い。正式に雇用が決まった後はお前の管轄に入れる。それとラギーたちと同じようにここの空いてる客室に住まわせるから、手配を」
「かしこまりました」
ハンスはにこりと柔和な笑みを浮かべると、ニナとともにレオナに断ってから部屋を辞した。部屋の扉の近くに立っていたは必然的に彼らとすれ違うことになったのだが、ハンスが通り過ぎる際パチリと視線が絡んだので、様子を伺いながら会釈する。ハンスはにこやかな笑みを浮かべ返してきたが、その視線の中にを見定めるような色が混ざっていることに気づいた。
「ハンスはお前の祖父さんと同じタイプだ」
「おじいさまと……?」
二人が扉の向こうへ消えた後、レオナが口を開いた。
つまり、柔和な笑顔の裏で色々と考えているタイプということだろうか。は不遜な顧客やお偉方を相手にしている際の笑っているようで笑っていない祖父の笑顔を思い出し、ふるりと体を震わせる。どうやら、しばらくはレオナが直属の上司ということになるようだが、正式な雇用が叶えばその後はハンスの部下になるらしい。上手くやっていけるだろうか、と一抹の不安を覚えるだったが、ここまで来れたのだからやるしかないのだと気合いを入れ直した。
「俺はこのまま仕事に戻る」
「あとは任せる」とラギーに振ったレオナの手元には、サンドウィッチのような軽食が置かれていた。
まさか、あれが昼食なのか。
抜け出す口実とまで言っていたのでてっきりどこかへ食べに行くのだと思っていたが驚いて声をかけようとしたが、ラギーに腕を引かれる。そのまま部屋の外へと連れ出され、扉が閉められたところではラギーに詰め寄った。
「あれで済ませないといけないくらい忙しいなら、最初からラギーさんに全部任せておけば良かったじゃないの」
「まぁまぁ、割といつものことなんで。ずっと机に向かってると息も詰まるし、レオナさんも息抜きしたかったんスよ。それに十一年ぶりなんでしょ、会うの。レオナさんも君と少しでも話す時間が欲しかったんじゃないスか?」
「…………」
にこにこ、というより少々にやついて面白がっている節があるラギーだが、もし本当にレオナもとの再会を喜んでくれているのであれば、それはとても嬉しい――とは弛む口元を抑えきれなかった。
そのままラギーにはハンスが用意してくれているであろうが借りる客室へ案内してもらい、屋敷での暮らし方や使える設備の説明などを受け、その日は終わった。
ちなみに、に宛てがわれた客室はただの職員が暮らすにしては広く家具や寝具も高級品で思わずラギーに何かの手違いではないかと確認してしまったが、どの部屋も同じらしい。余りの厚待遇に心が落ち着かず、ゆっくり休めるだろうかとしばらく戦々恐々としていただったが、就寝前の身支度を終えふかふかのベッドに飛び込んだ後は長旅の疲れもあり、結局全身を包む心地好さに誘われるまま朝まで一度も目覚めることなく眠れたのだった。